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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

ここでほとんど手打ちはできた。夜に入るまで、飲み興じ、あくる早暁には、すでに阮の三兄弟は、もとの石碣村へ、飄として立ち帰るべく、朝飯をいそいでいた。

「時が来たら、そッと急報する。そのさいには、抜からぬように」

「ご安心なすって」

三兄弟はニコと笑って鞋を穿いた。路銀だといって銀三十両を晁蓋が贈ったが、どうしても受けとらない。呉先生は、その物固さを笑って、

「痩せ我慢しなさんな。銀子のちょっとやそっと、受けても辞しても、晁家としては、おなじこった。まず、それは貰って、旗亭の借金でも返しておくほうが上策というもんじゃよ」

かくて。――三兄弟は別れ去り、公孫勝と劉唐とは、晁蓋の名主屋敷に、食客としてとどまった。さらに呉用のほうは、つい近所の住居のこと。家塾に帰って、あいかわらず村童相手の寺小屋先生になりすまし、折を見ては、ちょくちょく荘院の奥を訪ねて、茶ばなしの間に、世間たれも知らぬ密事の打合せをすましては、また何くわぬ顔で、塾の学童の中へもどっていた。

仮装の隊商十一梱、青面獣を頭として、北京を出立する事

ここは北京大名府の梁中書の官邸だ。

後房の園には、黄薔薇の香が蒸れ匂い、苑廊の欄には、ペルシャ猫が腹這っていた。