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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

高も、そっと、それらの薫袖のなかに立ちまじって、よそながら見物していた。

すると今、一と競技終ったらしく、次のどよめきの後から、端王の姿が“懸ノ木”の下に立つのが見えた。――見るからに軽快な鞠装束である。薄紗の唐巾で髪をとどめ、袍(上着)は白地きんらんに紫の繍の華文、袂に飛龍をえがかせ、鳳凰靴(くつ)を足にはいておられる。そして、相手方の備えを見て、

「よいか」

と、いったと思うと、いま、懸りの中央へ、侍者が据えた鞠へむかって、つかつかと進み出られた。

位階に従って、まず高貴な人から、第一を蹴り、以下順々に、二座三座四座と、八本の“懸ノ木”に備えている敵手へ蹴渡してゆくのである。さすが、端王の技は、皇族らしくきれいで、しかも、受けにも渡しにもそつがなかった。

ところが、どうした過ちか、一人の靴先から外れた鞠が、いきなり見物の方へ飛んできた。

「ア。あぶない」

頭上に見舞われた人々は、群れを割って、こけ転んだ。しかし、ちょうど近くにいた高は、得たりとばかり跳び寄って、ぽーんと、その鞠をはるか端王の方へ、蹴わたした。

「おっ、見事」

彼方で谺のように声がした。