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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

蔡大臣が、この身を目付役として、差し向けられた一事でもおわかりだろう。黄泥岡に出没したと聞く七人の棗商人、一人の酒売り、また梁家の裏切り者、青面獣楊志。それらの悪徒を、一人のこらず、十日以内に、縛め捕って、東京へ押送せいとの厳達でおざるぞ」

「えっ。十日のご期限ですと」

「万が一にも、十日を過ぎるときは、お気のどくだが、お奉行自体に、沙門島(流刑の孤島)までお出かけ願う仕儀と相成るかもしれん。もとより此方もまた、のんべんくらりと、手ぶらで都へ帰る面もない。どの道、あなたと生死はともにする気でまいったから、左様ご承知おきありたい」

奉行は青くなった。

それ以前とて、やってはいたが、さあこうなると、一刻が気が気でない。

「刑事部屋の室長、何濤を呼べ」

即刻、役室へ移って、彼は自分にかかった重いものを、部下の精鋭に押しつけた。

「何濤。何をしておるんだ、毎日なにを」

「お奉行。お奉行には手前どもの働きが、まだ鈍いとでも仰っしゃるんですか」

「口ごたえいたすな。そのほう自身とて、寸刻たりとも、刑事部屋で悠長そうな顔していられる場合ではあるまいが」

「冗談いっちゃあ困ります。