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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「それならおやすいこと。ご案内いたそう」

「なんとも、お手数をかけますが、くれぐれも、よろしくどうぞ」

「当然な勤めです。さように恐縮なさるにはおよびません。……が、知事閣下には、たった今、ご休息に入ったばかり、私もこれからちょっと、自宅へ忘れ物を取りに帰るので、暫時の間、あなたもここで休みながら、お待ちうけくださらんか」

「結構です。どうぞ、そちらの御用ずみの上で」

「では、後刻また」

宋江は、そう約束して、往来へ出ていった。

ところが、近くの辻を曲がると、彼は役署の裏門へ行って、小使を呼び出していた。そして、

「やがて、知事閣下が官邸から役署へお戻りだろうが、そしたらお前はすぐ、正門前の茶店へ行って、済州奉行所の何濤という者に会い、宋押司が見えるまでは、そこを動かず待つようにと、よく言伝てしておいてくれい。よろしいか」

と、念を押して立ち去った。

いや、それのみではない。宋江は、官の厩から一頭の馬を曳き出して跳び乗るやいなや、いずこともなく、馬に鞭を打ッて急いでいた。怪しむべし、その姿は、またたくまに、名主晁蓋の住む東渓村の村道へ向って近づきつつあるではないか。