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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
それと茶店に待たせてある何濤が、直々知事に面接して、公文手交の手続きをとれば、もう万事は休すです。……即刻、ここはお立ち退きあるがいい」
「かたじけない」
晁蓋は、友の手をかたく握りしめて、男泣きの涙をホロリと頬に流した。
「このご恩は忘れますまい。……生涯にかけて、このご恩は」
「さ、さ。そんなことは、どうでもいい。私もすぐ立ち帰らねばなりません。くれぐれ、ご猶予なさるなよ」
こう言うやいな、宋江はもう帰りかける。その袂を惜しむかのように、晁蓋もともに裏庭の廊を渡ってきながら、離亭へ向って、三名の者の名を呼んだ。
声を聞いて、そこから庭面へ出て来たのは、呉用学人、公孫勝、劉唐の三名だった。――晁蓋は彼らを指さして、
「押司に対しては、何事もつつみ隠しはできません。あれが一味の者です。ほかに阮の三兄弟も加わっておりましたが、その者たちはすでに、十万貫の内の分け前を受取って、石碣村のわが家へ帰ってゆきました。……おいっ、みんな、県の宋江さまだ、ごあいさつして、おのおのの名を名のれ」
それに対して、宋江もまた、廊からちょっと会釈を返した。そして身を翻すと、門外へ走り出て、ふたたびその馬上姿を、県城の町のほうへ、燕のごとく小さくしていった。