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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
朱同が、道は三つあるといったのは、じつは嘘なのだ。一手の人数を裂いて自分の手に持ち、なるべく、晁蓋の退路を都合よくしてやろうという考えで、わざと一所にとどまらず、ただ、右往左往を見せていたまでである。
ところで、当の晁蓋はといえば、この時まだ奥の一房を出ていず、下男や壮丁に命じて、わが家の諸所に火を放ち、
「これでいい! さ、公孫勝、運を天にまかせて出かけようぜ」
と、内から横窓を破って躍り出し、土塀を越えて、外を望んだ。
ふと、裏門の方からその影をみとめた朱同は、
「やっ、西側の土塀が怪しいぞ。そっちへ廻れ」
と、逆な方角へ同勢を向け変え、そこへ来るとまた、わざと仰山な地だんだ踏んで、
「さては、表門の方か。それっ、表の村道へ出ろっ」
と、命令した。
だが、こういう場合の願いと、出る目とは、とかく皮肉な賽コロの裏目が出る。東側の路次から脱兎のごとく馳けてきた晁蓋と公孫勝の影を、はからず朱同も見たし、朱同の手勢も、ばッたり、行き会ってしまったのだった。
「いたぞっ。逃がすな」
もとより部下の捕手は何も知らない。追われる晁蓋もまた、知ろうはずはない。ぜひなく野太刀を抜き払って、