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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「死にたいのか。死にたけれや、かかって来いっ」
公孫勝も道士の持つ無反の戒刀をかざして構えた。
「邪魔するやつは一颯だぞ」
それに怯んで、わっと退く隙に、
「孫勝! むだな殺生はなるべくよそうぜ。逃げろ、逃げろ」
二人とも、闇へ向って、鹿のように走りだした。
ところへ、馬上の偵察長が、早くも馬を躍らしてきた。そして異様な昂奮を、その姿に見せて、
「朱同、賊を見たのか」
「オオ偵察長、遅かった。その馬をかしておくんなさい」
「ど、どうするんだ」
「馬さえあれや逃がすこッちゃなかったのに、惜しくも見失ったところですよ。さ、早く早く」
急かれるまま、偵察長はつい、自分の馬を朱同に貸した。朱同は前後の捕手を見まわして、
「ええい、役に立たねえ薄のろめら、おれの馬につづいてこい」
と罵られても、いきなり一ト鞭あてた馬の迅さに、徒歩では追いつけるはずもない。
朱同はまんまと、部下を撒いて、たちまち先へ走って行く二つの影に追いついた。――念のためと、振り向いて、ほかに人もなしと見るや、その後ろから呼びかけた。
「おおい、名主どの。横道へ入れ、横道へ入れ。彼方の林の道を行けよ」