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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
……まるで俺を帝王あつかいしていやがる」
知事は、彼を迎えるに、賓礼をもってした。大餐を設けて、酒席の主座にすえ、そして感謝状を読みあげた。あまっさえ、土地の金持ちから集まった一千貫の金を、賞として、彼に授与すると、讃辞に添えて申し述べた。
「そいつあ、ありがたいこってすが」と、武松は、あいさつに窮したようにいった。
「なにも、虎の一匹ぐらいを拳で撲り殺したぐらいなことは、資本のかかったわけじゃなし、たまたま、あっしが拾った道ばたの運みたいなような出来事。――どうか、お金はこれまでにくそ骨おった猟師さんやら、虎に食われた土地のあわれな遺族方にでも頒けてやっておくんなさい」
「それでいいのか」
知事は彼の無欲に驚いた顔つきだった。
「へい、いいにもなんにも、それで大満足でございます」
「むむ、見上げたものだ。では金は彼らに分配してやるとして。……どうだな武松とやら、今日よりそちを県の都頭(伍長)に取立てたいが、仕官の心はないか」
「ないどころじゃございませんが、じつはその、清河県の兄に会いたくて、ここまで来た旅の途中でございますんで」
「清河県なら何もここから遠くではない。