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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

梨売りの兵隊の子、大人の秘戯を往来に撒きちらす事

「旦那え……」と、酒もそろそろ廻るほどに、婆までがいやに色っぽく眼もとを染めて「どういうンでしょうね、旦那ってお人は」

「なにがさ? 婆さん」

「なにがじゃありませんよ。こちらのお内儀さんにも、お杯ぐらい上げたらいいでしょ」

「だって、金蓮さんは、迷惑そうなお顔じゃないか」

「ま、お察しが悪い。旦那と一しょなので、恥かしいんですよ。ほんとは、飲ける口なんだもの。さあ、おかみさんも、お杯を受けたらいいじゃないの。焦れッたいねえ」

「まるで、わしとおかみさんとで、叱られてるみたいだな、はははは。時に、あなたはお幾歳ですか」

「もう二十三ですの」

金蓮は、やっと答えて、同時に、貰った杯へ、唇を濡らした。

「じゃあ、わたしのほうが、九ツも上だな。お針は上手だし、礼儀作法といい、人当りの姿態もよし……、武大さんとやらが羨ましいね」

「オヤ、禁句ですよ旦那。おかみさんは、とても亭主運が悪いんで、武大の武の字を思い出しても、すぐ気が鬱いで来るんですとさ」

「それはまあ、似た人もあるもんだね。この西門慶も女房運が悪くッて悪くって。もう女は持つまいと思ったほどだ」

「だって、おくさんは、おととしお亡くなりになったでしょ。