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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「ま、あきれた。この通りだよ女ってものは。男に罪を着せまいとしてさ」

「婆さん、静かにしろよ。もうできちまったものは仕方がないやね」

「旦那も居直りなさるんですかえ」

「遠くて近きは何とやらだよ。この上は隣の武大に知れないよう、頼むは神様仏様、次いでは王婆様々だ。今日だけでなく極く内々に、この後の首尾もひとつたのむぜ」

「それはもう、知れたらこの婆だって、同罪でござんすものね。その代りに旦那え、一生末生、婆を大事に、お礼のほうもいいでしょうね」

「わかったよ、わかったよ。河豚と間男の味は忘れられない。ここで逢曳きするからには、わたしたちだけでいい思いをしているわけはないやね」

「じゃあ、この婆も腹をすえたとして。……金蓮さん、おまえも覚悟はしたろうね。これッきりじゃないんだよ」

「ええ、それはもうおばさん、こうなるからには私だって」

「倖せだよ、おまえさん」と、婆は彼女の背を一つ叩いて「これからは、間がな隙がな、可愛がっていただきなよ。……だけど、いくら頓馬の武大でも、勘づかれた日には事だからね。さ、今日はもう帰っておいで」

追うように、金蓮を裏口から帰してしまうと、婆はさっそく、西門慶から当座の大枚な銀子を褒美に受けとった。