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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
そのお世辞でもあるまいが、婆は、西門慶が女にかけての凄腕を、聞きしに勝るものだったと、舌を巻いて驚嘆する。西門慶は「その道にかけての俺を今知ったか」といわぬばかりに、ヘラヘラ脂下がった顔してその日は戻って行った。
さあそれからは、ここを痴戯の池として、鴛鴦の濡れ遊ばない日はなかった。西門慶も熱々に通ってくるが、むしろ金蓮こそ今は盲目といっていい。彼女の眠っていた女奴隷の情火は、逆に、男を喘がせて男の精を喰べ尽さねば止まぬ淫婦の本然を狂い咲きに開かせてきたすがたである。ただの一日でも西門慶の愛撫がなければ焦々してきて、いても起ってもいられない。
が、こんな逢曳きが、世間誰にもわからずに、永続きするはずはなかった。いつしか二人の密会は近所合壁の私語となっていたが、知らぬは亭主の武大ばかり……。それがまた、他人眼の哀れと苦笑を誘って、噂に噂を醸していた。
ここに、州生れの兵隊の子で、哥という十三、四のませた小僧ッ子がいる。
※(「軍+おおざと」、第4水準2-90-23)州兵の父親は、戦傷で寝たッきりなので、母親一人の細腕の家計を助けているというちょッと感心なところもある少年だった。