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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

姦夫の足業は武大を悶絶させ、妖婦は 砒霜の毒を秘めてそら泣きに泣くこと

「み、みてやがれっ。くそばばめ」

ベソを掻き掻き、※(「軍+おおざと」、第4水準2-90-23)哥はそこら中にころがり出した梨や杏を籠へ拾いあつめ、あとも見ずに、その日はついに逃げ出してしまった。

姦夫の足業は武大を悶絶させ、妖婦は

砒霜の毒を秘めてそら泣きに泣くこと

武大はいつもの公園に出て、蒸饅頭の蒸籠店をひろげていた。陽も午さがりの頃である。池の鵞鳥ばかりガアガア啼いて、ここの蒸饅頭は一こう人も振り向かない。

「ええおい、武大さんよ。嘘じゃないよ。ほんとのことを教えたんだぜ。だのに、まだ疑っているのかい」

哥はくやしまぎれに、また日ごろ親しい武大でもあるので、ここへ来てのこらず喋舌ってしまったらしい。

ところが、肝腎な武大のほうでは、一こう真にうける風がないのだ。あくまで金蓮を庇っている。しかも街道一の古舗の大旦那が、ひとの女房に手を出すはずがあるもんか。と笑ってばかりいるのである。

「焦れッてえな、武大さんときたら。だから世間でいうんだよ。ッ垂らしの薄野呂だッて。――見ねえな、おらの顔や手頸を」

「あれ坊。その傷はまあ、どうしたわけだい」

「これもみんな武大さんのためじゃないか。