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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
いや仰天したのは王婆と金蓮である。万が一、砒霜の毒気が残っていて、それに中てられたとしたら大変である。と思って一瞬、色蒼ざめたが、九叔が悶掻きながらも「早く、駕でも戸板でも呼んでくれ。家へ帰って養生したい」と叫ぶので大慌てに人を頼んで、九叔を家へ送らせた。
今朝は、あんなに元気で家を出た人が、と九叔の妻は泣き泣き良人を病床に宥り寝かせた。――だが、誰もいなくなると、
「女房、罪なことをしたな。じつあ、おれの悶掻きは仮病なのさ」
と、けらけら笑って起き直った。
彼は妻に、一切を話した。西門慶から貰った金も出して見せた。「……案のじょう、武大はただの病死じゃない」とも鑑定したところを、つぶさに聞かせた。
「まあ、私もいまだから言いますけれど、王婆の近所の者から、へんな噂を耳にしていたんですよ。だけど、なにしろ相手が西門大郎の旦那でしょう。ですから、めったなことは口にするのも慎んでいたんですの。……もう金輪際、こんなお金には手をつけますまい」
「もちろん、俺もぶるぶるだが、しかし、金を費わねえたって、万が一の時になりゃあ、疑われるぜ」
「ですから、こうなすっては」