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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

ムシャクシャ紛れの声である。そして、

「さあ、坊も食べな。九叔も一杯飲ってくれ。明日は兄貴の四十九日だ」

と、自分もともに痛飲し出した。怏々鬱々、遣りばなきものが眼気の底にギラギラ沸る。

まもなく彼は、九叔と哥をそこへ待たせておいて、ぷいと外へ出かけてしまった。従卒二、三人を連れている。そして街へかかると、

「あれを買え、これを買え」

と、気前よく銭を渡し散らす。――従卒は命じられるまま文房具屋では、筆、墨、硯、紙など買入れ、市場では蒸した鶏一羽、酒一荷を。また花だの線香だの、さらに神仏の供え物には一番な豪奢とされている丸煮の豚の頭まで買って、持ちきれないほど抱えこんだ。

「……姉さん、こんちは」

彼が、その家の軒下へ立つと、金蓮の返辞は二階でしていた。

「たれ?」

「あっしですよ。武松です」

「あら、二郎さんですか。ちょっと待ってね」

どきっとしたに違いない。

だが、彼女の許へも、武松の訴えが却下となったことは、とうに知らせが来ていたから、その点では安心し抜いていたのである。ただ、「また、なにしにやって来たのか」と、うるさく思い「ままよ、その場その場で扱ってやるばかり……」