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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「冗談じゃねえよ、新入り、気はたしかかい」
「気はたしかだが、生れつき、ちっとばかり臍が曲がって付いてるんだ。こいつあ、母親のせいだから仕方がねえや」
「片意地を言いなさんなよ。……あれあれ、差撥がやって来たぜ。みんな、静かにしろよ」
彼らは靴音に敏感だった。獄中は薄暗くシーンとなる。鉄錠の音が、不気味を誘う。
「陽穀県の前都頭――武松と申すやつはその方か。こっちへ出ろ。ついて来い」
点視庁の広場には、管営(牢獄の長官)以下の軍卒十名ほどが、待っていた。
管営は、部下に命じた。
「罪人の首枷を外せ」――そしてまた言った。ひきすえた武松の上に向ってである。
「――太祖武徳皇帝いらい、定めおかれた刑法の一として、牢城初入りの流人には、一百打の殺威棒をくだす掟だぞ。――それっ者ども、叩きのめせ」
「あ。どうなさるんで」
「ジタバタいたすな」
「騒々しいのはそっちだろう。おれはピクともしてはいない。だのになんで、両手をつかまえ、おれの周りを取り囲むのか」
「悲鳴をあげて狂うからだ。どんな奴でも十打、二十打と食えば、暴れ廻って打ちすえ難い」
「はははは。撲る方から先に要心してやがる。