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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「それ見なッせい。あのとき、おれたち夫婦ですすめたように、二龍山へ突ッ奔ってしまえば、よもや、こんなことにはならなかったろうによ!」
張青は嘆じたが、武松もおのれの馬鹿を知ってるように薄く笑った。
「だが兄弟、男は後悔しねえもんだ」
そのうち、街へ放っておいた張青の子分が、報らせに帰って来た。
「いやもう、いまだに城内外は、しらみつぶしの探索騒ぎだ。高札はいたる所だし、一町五軒の五人組、十人組の町目付が出来、万一犯人を知って、届け出ぬ者は、町中同罪の触れ廻しでさ。その代り、武松の足どりを告げた者には、三千貫の賞金をくれると、奉行所の触れが、今日、出たばかりでございましたぜ」
「こいつアいけねえ」と張青は舌打ちして「そろそろ、ここも峠の一軒と、安心しちゃいられそうもねえ」
と、その日武松へあらたまって、再度、二龍山落ちを切にすすめた。
じつは、武松もすでに、その気ではあったらしい。
「じゃあ一つ、おそれいるが、その二龍山宝珠寺にいるっていう花和尚魯智深と青面獣楊志ってえお人へあてて、一本、添え状を書いちゃくれませんか」
「おやすいこった。しかし、その身装じゃ、道中のほどもおぼつかないな」