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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
花燈籠に魔女の眼はかがやき、 またも君子宋江に女難のあること
「お久しいなあ。じつにお久しい」
と、なつかしげに遠来の客の手をかたく握った。
花燈籠に魔女の眼はかがやき、
またも君子宋江に女難のあること
小李広花栄の家と、宋家村の宋江の家とは、元々浅からぬ旧縁の仲だった。
だから宋江の犯した一身上の過ち。その以後の流浪の境遇なども、よく知っていて、蔭ながら案じる余り、「ぜひこの地へ来給え、どんなにもして匿まってあげる」と、常々、宋江の郷里へ宛てて音信していたものだった。
「おことばにあまえて、あつかましく、やって来ました」
という宋江へ、花栄は大きく手を振って、
「なんだ、水くさいことを。さあもう我が家とおもって、おちついてくれ給え。そうだ、妻の崔氏へも紹介しよう。そして妻の妹へも」
何不自由ない官邸だし、気のおけそうな家庭でもない。その日から宋江には、特に庭園ぞいの一室があてがわれ、侍者小間使いなどまで付けて、賓客の扱いであるのみでなく、花栄が一日の軍務から帰邸すると、夜ごと夜ごとが、家庭的歓迎の宴みたいであった。
「花君。こうお世話をかけては恐縮です。もうご家族なみに、放っておいていただいたほうがありがたいですよ」