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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
――万語は拝姿のうえとし、とりあえず右の公命をおびて、大寨の閣中にてお待ち申す。
と、ある。
しかし花栄の妻や妹は心配そうに、彼の身支度にいそいそ侍きながらも言いぬいた。
「大丈夫でしょうかしら。何かあったんじゃないでしょうか」
「なにもこっちに疚しいことはないのだから、正々堂々たるものさ」
「でも、宋江さまの経緯がありますもの」
「その宋江大人はもうこの地を嫌って、清風山へ去ってしまった。あれだってすべて劉夫人の毒のある舌と劉高の小心からおこったことだ。こっちで怯け目を持ついわれはない」
花栄はやがて出かけたが、わざと従者は五名しか連れていなかった。
しかるに、鎮台の城寨を一歩入ってみると、この日、なんとなく営庭から庁閣にいたるまでが物々しい空気である。
もっとも日ごろの鎮台兵以外に、官兵一百人が階前に整列して、旌旗剣槍、ひときわ燦としていたせいもあろう。
「やあ、よくおいでられた」
黄信は彼を待っていた。
見れば、和解のための大饗の食卓は、すでに設けられている。――黄信からみじかい挨拶があって、
「ここに慕蓉閣下はおられぬが、これは慕蓉閣下のくだされたお杯といっていい。