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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

いざご両所とも、杯を持って、仲よく並んでいただこうか」

と、彼も立って、一方の劉高へ眼くばせした。

とたんに、花栄の背後にいた給仕人たちが、やにわに彼へ組みついた。絶叫、物音、すべて一瞬のまである。閣外の官兵もザワザワと混み入って来て、たちまち花栄の体を高手小手の縄目としてしまった。

それにも怯まず、花栄はありったけな声をして周囲を睨み、そして黄信を罵った。

「なんで拙者を縛るのだ! これが公平な和解なのか!」

「おお公平なる法規のご処置だ」

「理由をいえ、理由を」

「おのれの胸にあるものを、人に糺すまでもあるまい。……だが、白々しい吠え塞ぎに、動かぬ証人を突き会わせてやろう。劉君」

と、うしろの劉高を振り向いて。

「かねて君が捕えておいた清風山の紅巾の賊を、這奴の前へ突き出しておやんなさい」

「こころえた」

劉高はすぐ閣外からべつなもう一名の縄付を引っ立てて来た。花栄は一ト目見て仰天した。つい先夜、別離を惜しんで立った宋江ではないか。――相見て、茫然たるばかりである。いうべき言葉も知らず、とはまさにこの刹那の二人の驚きといっていい。

「多言は要すまい」

黄信は、傲然として言い払う。