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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

いや、われわれを義の弟として、長く引ッ提げて行ってください」

こう首を揃えて詫び入られ、また、こうまで、男が男に好かれたのでは、果てなく愚痴をいってもいられない。

かえりみれば、秦明もいまは天涯孤独だ、死んだ者が生きて還るわけでもない。かつは官途の腐敗も痛感している。ついに彼は杯をうけて、ここに山沢の同じ悲命児らと、生涯の義を結ぶこととなってしまった。――これや後々になって思えば、すべて天地の不可思議というしかなく、百八の宿業星が、自然この土に生れて相会す奇縁というしかないものだった。

一方。――清風鎮の鎮台大寨に軍備をしいて、慕蓉閣下の救援を待っていた黄信は、或る日、「おや、あれへ来るのは、秦総監ではないか。たった一騎で、はて何しにこれへ?」

と、そこの望楼から、鎮台大路を見下ろしながら怪しんでいた。

まもなく、大寨門から伝令が来た。やはり秦明であったのだ。彼にとっては上官でありまた武術の師でもある秦明である。自身、出迎えて、柵内の接官亭に請じ、つぶさに秦明の口から、こんどの事件の表裏やら、また秦明自身の境遇の一変をも、聞いたのだった。

「へえ? ……ではすべて、劉夫妻の悪だくみだったんですな」