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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
いわずもがな、彼の目的とは、黄信を説いて、血を流すなく、花栄の官邸にのこしてある妻や妹たちを寨外へ救出させることにあった。
また自分とともに、黄信をも、一味へ引き入れる誘いでもあったのだ。
「ぜひ仲間の内へ」
と、黄信はそれに応じたので、ただちに、秦明と二人で、鎮台城頭の官旗を下ろした。
遠くで、それを合図と見ていたものか、たちまち清風鎮の街中へ、約二百の山兵が、燕順、王矮虎、白面郎などに引率されて粛々と入って来た。
「や、官軍じゃないぞ」
「山兵だ、山賊だ」
町民はふるえ上がり、家々では戸を閉めた。
けれどこの山兵軍は、規律整然、さもしげな他見もしない。
鎮台の諸門は開け放たれ、宋江はただちに“市札”を辻々に立てさせた。
閉業、無用
恟々、無用
隠匿、無用
こう三無用の触れだった。
しかしただ一ヵ所、文官劉高がいた公邸へは、すぐ山兵が殺到していた。そして劉の家来は殺戮され、奥に隠れていた夫人は引きずり出されて山へ送られた。――さらにその倉庫からは、種々な財宝が道へ積み出され、牛、馬、鶏、羊などとあわせて、それら財物はすべて貧民たちの手へ公平に分配された。