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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
一面、花栄の公邸から、花栄の妻や妹が救出されていたのはいうまでもない。が、花栄はその肉親たちを連れたのみで、公邸の家財はやはり困窮者の布施に頒けてしまった。
かくて、山兵が獲た物は何かといえば、鎮台内の備品や食糧や兵具であった。それだけでも彼らの凱旋を賑わすには持ちきれないほどの分捕り品であった。――全員、歓呼のうちに山寨へひきあげる。当夜の大宴は、山寨中の端から端までの大はしゃぎ。
ところが、いつのまにか、王矮虎ひとりだけが宴の中に見えない。
「ははアん。……あの女好きめ、もうはやいとこを、やってやがるな」
白面郎の岡焼きを小耳にとめて、燕順が、
「そうだ、宋先生、あの劉夫人めの処分は、どうしましょうか」
「つれて来給え」
即座に、白面郎と燕順がどこかへ行って、劉夫人を拉して来た。それに従いて、いかにも不服面なのは、王矮虎だった。矮虎は宋江を見るやいな先手を打った。
「先生、かまッておくんなさるな。女はもう自分の体を、この矮虎にまかせてしまったんですからね」
「そうか、思いをとげたのか」
「へへへへ、いわば今からはてまえの女房ッてわけですからね」
「それは考えものだろう。