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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

思ってもみろ。かつてこの宋江が、危難を助けてやったのに、その恩をアダで返し、ために以後の大きな禍いをよび起した毒婦ではあるまいか」

「毒婦結構、先生の前ですが、河豚にはまた、河豚の巧味がありましてね」

「でも生涯の伴侶にするものではない。おまえはいいにしろ、周囲に不和と不慮のいざこざが絶えぬ。たとえば秦明の家族があえない死を遂げたなども、もしこの女がなかったら、起りうる事件ではなかったろう」

こう二人の間で“毒婦問答”が交わされている隙に、後ろで突然、劉夫人の絶叫が聞えた。――あっと王矮虎がふりむいてみると、女はすでに乳のあたりに短剣を突き立てられて鮮血のなかに仆れていた。

「矮虎、いい加減にしろ」

叱ったのは兄貴分の燕順である。矮虎は、首を垂れてしまった。

だがべつに、ここは女禁制の世界というわけでもない。矮虎も恰好なのをそのうちに見つけるサと皆してなだめ、また宋江は、秦明の癒えない孤愁を思いやって、自分が媒人の労をとり、花栄の妹を、秦明の妻にめあわせた。その儀式や祝宴がまた両三日つづいたのである。

「やあ、こんどこそは、大がかりな官兵の討伐がやって来ますぞ」