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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
しかし会えてよかった」
「私こそ、しあわせでした」
即日、彼の命令で、宋江はしごく身ままな独房へ移され、鍵まで彼の手に持たせられた。その上、数日たつと、節級は彼をつれて、町へ出かけ、酒楼の階上で、さらに歓をつくした。呉学究との旧交を打明け、また宋江の身の上話もいろいろ求め、十年の交じわりのような想いをあたためた。
そもそも、この節級は、凡人でない。
戴宗という名は、すでに宋江がもらってきた紹介状でわかっていたが、江州では両院の押牢使という上位にあり、称えて、「戴院長」と敬せられているだけでなく、おどろくべき道術をもっていた。
その道術を、彼自身は“神行法”といっている。
たとえば、急な軍使となって長途を飛ぶさいには、仏神の像を鞍皮に画いた甲馬に踏みまたがって、脚に咒符を結いつけ、一日によく五百里(支那里)を飛ぶという神技なのだ。で、戴院長のまたの名を、神行太保の戴宗とも人々はいった。
それはともあれ、酒中、階下からとんとんと早足で馳け上って来た者がある。
見ると、酒楼のお帳場さんだ。下でお客とお客の喧嘩だという。それも途方もない暴れ方、どうしても院長さんでもなければおさまりはつかない。