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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「おッと、こっちへ、張り駒をよこせ。だれだ相手は?」

「李逵、すごい鼻息だな」

「べら棒め。このとおりだ、さあこい」

銀十両を、前において。

「快だ」

「よしっ、又とゆく」

「張乙、いいな。――あ、いけねえ」

こんどは、張乙の方から先張りで挑みかけた。

「又!」

「受けた、みんなかかって来い。快だ!」

それも負け、李逵の貼り目は、つづいて四、五たびも取られてしまった。それで一瞬、しょぼッとしたが、

「張乙、もいちど駒を振れ。五両貼る」

「貼るたッて、ねえじゃあねえか。どこにかねがあるんだよ」

「あと払いだ」

「ふざけるな」

「一ぺんだけ貸せよ」

「いけないよ」

「なにを――」と、とたんに、張乙の前にあった銀をジャラジャラと掻き廻し「借りなかったらいいんだろう」と、その中の十両をふところに入れて突っ立った。

「あっ、無茶するな。賭場荒しをやらかす気か」

「これでも今日は大人しいんだぞ。もすこし何かしてもらいてえのか」

「ア痛っ。やったな。客人っ、手をかしてくれっ」

「蹴ちらすぞ」

場中の総立ちを見ると、李逵はほんとに暴れ出した。鼻血を出す者、手を折る者、一瞬、さんたんたる光景を現じ出した。