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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「おめえンとこへさ。この法印さんをご案内してね。……もし法印さま、こいつですよ、玉臂匠というあだ名通りな名人の金大堅は」
「これはお初に」
「ま、どんな御用かぞんじません、どうぞお寄んなすって」
と、大堅はさっそく、わが家へ連れもどって、二人から用向きを聞いてみた。――聞いてみれば、泰安州の岳廟で五岳楼が重修され、それを機に、金持の有志の手で一基の石碑が建てられるというはなし。――そして戴宗がここでも銀子五十両を即金で前においたから、大堅も眼をまろくし、それに単純な職人気質、一も二もなく、
「ようござんすとも! 東岳大帝をおまつりしてある岳廟の碑を手がけるなんざ、彫師一代のほまれだ、腕ッこき、やりやしょう」
とばかり大機嫌で引きうけた。二人ともそんな調子で、爪のあかほども、戴宗を疑ってみようともしていない。
その晩は、この路次裏の家で酒となり、明け方には三人連れの旅に立った。そして小半日も歩いたころ、戴宗は「先へ行って有志一同を迎えに出させる」という口実のもとに、姿を消してしまった。
それは、たそがれ近くのこと、道も七、八十里は歩いて、二人ともやや疲れ気味な足を引きずって行くと、突如、夕霧のうちで口笛がつんざいた。