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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「わッしょ」

「わっしょ」

「わッしょい!」

「こらッ――」と、兵隊たちは押し戻し「どこへ行く、どこへ。矢来が見えんか」

「中の広ッ原へだよ」

「てめえらも、首をちょン斬っていただきたいのか」

「ひぇッ……」と、旅商人らは、笑い合って「そいつはごめんだ。こちらは見物させていただきますのさ」

と、車の上に登って、矢来越しに手をかざし合っている。そこへ妙な蛇使いの男、物もらい、風車売り、風船屋、いろんな雑人たちもがやがやと寄ってしまう。制止しても、手がつけられない。

なにしろ、あっちこちである。その喧騒たるや一ト通りでない。そのまに早くも刑場の中央では、検視以下の諸役人が現われ、罪文を読み上げ、また両者の首カセを取り外させるやいな、ずかずかと首斬り役二名が、だんびら提げて側へ寄り、ただ一語、

「観念!」

という声の下だ。

一閃、キラと動く物が遠目にも見えた。

いやその途端というよりは、一刹那の寸前だった。太刀把り二人が二人とも、飛んで来た二タ筋の矢にあっと顔を伏せ、また、何処かでは、

ジャン! ジャン、ジャン、ジャン……

と銅鑼の早鉦が鳴っていた。

銅鑼を叩いたのは、江州車を踏んまえて高く立っていた旅商人の一人だが、ほかの連中は皆、もうそこには見えない。