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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
宋江は、悵然と泣いた。戴宗もうれし涙にぬれる。万感のこと、来し方から今後のこと、到底、とっさには語りきれもしない。
「ところで、ここはどこです」
「河畔の白龍神廟でしょう」
「追手がやって来ませんか」
「もちろん来ましょう。けれど、二つの板斧を持った体じゅう黒い男が、殿軍はおれにまかせろと、縦横無尽、追ッ払ってゆきました」
「え。二つの板斧を持った男? それは一体誰だろう。そんな者は仲間にいないが」
「ああ分った、黒旋風李逵ですよ。李逵もただ一人ながら、今日のこの機会を窺っていたものとみえる」
ところへ、廟門の外から大童となった李逵が韋駄天と馳けこんで来た。一同へ向い大声で外から告げていう。
「ここには夕方まで居られねえぞ! 城内では蔡九、黄文炳の指揮で、数千の大軍が集合中だ、はやく江を渡って逃げのびろ」
宋江と戴宗が、廟から呼んだ。
「李逵、これへ来い。――梁山泊の頭領たちにひきあわせてやる」
「おおう、こっちもそのつもりだ」
時もよし、ここへまた、今しがた江岸に着いた三隻の船から上陸って来た一群があった。それぞれ浪裏白跳の張順、張横であり、穆家の兄弟、浪人の薛永、また顔役の李俊、李立から、童威、童猛など、すべて“揚子江ノ三覇”といわれる者どもが、塩密売の仲間まで狩りあつめて、これも宋江の救出に馳せつけて来たものだっ