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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「ほう……。あの人が泣いて言っている!」

一同は感に打たれた。異議なく、彼の願いは、

「それや無理もない。一清先生、行ってらっしゃい」

と、その場で衆議一決となった。

公孫勝は大いによろこび、翌々日はもう以前の雲遊の道士姿となり、腰に戒刀、頭には棕梠笠、そして白衣、白の脚絆に、笈を負って、わが故郷薊州へさして立って行った。

すると彼を見送った帰り途からのことである。何を考え出したか、黒旋風李逵が、がらにもなく時々拳で目をこすっていた。仲間たちはおかしがって、

「李逵、蜂に刺されたのか」

「ははん、赤辛子を噛みつぶしたな」

などと、からかってはいたが、しかし奇妙なことには、日ごろ腹立ちッぽい李逵が怒りもしない。のみならず、その晩の聚議庁の集いでも、飲まず、笑わず、酔いもせず、ベソベソ泣いてばかりいる。

「どうした? 李逵」

宋江がそばへ寄って訊いてみると、訊いてくれた人が宋江であったせいにもよるだろう。彼は手放しでわんわん泣き出して、そして吠えるように訴え出した。

「お、おれだってよ……木の股から生れたわけじゃねえや。こう見えても、故郷には、年とったおふくろがいらアな。