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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
町は七月の猛暑。その乾いた町は一日中、こんな噂で、わんわんと沸いていた。
ところが、たそがれ早めに、当の李逵だの証人たちは、再び県城の門から街道へ列をなして曳かれて来た。早くも刑場で処刑になるのかと、早合点な声もあったが、そうではなく、江州府送りの船積みとなるらしく、江岸に繋いである一船の船牢へ移されることになったのだった。
「もし、もし。李雲先生」
いましも列の先頭が、西門外の辻へかかった時である。飲屋の亭主朱富が、飛び出して来て、李雲の馬の前に腰をかがめた。
「どうもこのお暑いのに、ご苦労さまでございますね。沂嶺の往来を悩ました虎族は退治されるし、あげくに、お尋ね者の黒旋風をお召捕りくだすって、町のものにとっちゃ、こんなありがたいことはございません。祭りをやって、お祝いしてもいいほどでございますよ。ま、どうぞ店さきじゃございますが、冷やッこい酒を一杯おやりなすって、ちょっくらご休息でもどうぞ」
「いやいや朱富、気もちはありがたいが、明るいうちに大事な極悪人を船牢まで移し終ってしまわんことには、何せい肩の荷が下りんでな」
「ま、そう仰っしゃらないで。