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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「よしてくれ。そんないい気なもんじゃねえよ。じつあ、せっかく連れに来たおふくろを、沂嶺の上で、虎に啖われてしまってよ、それからのやけのやん八、四匹の虎を叩っ殺した勢いで、ついまた大酒を飲った始末さ。……むむ、それにつけ、いまいましいのは因業野郎の曹って奴だ。兄き、ちょっくら引っ返して、あいつの首を引ン捻じって来るからここで待っていてくれ」
「いや、おれも行く――」と、朱富もまた後ろを振り向いて「おれにとっては、師匠にあたる李雲さんを、あのままには捨てておけねえ。いや、李雲先生の酒だけには、しびれ薬を軽く入れておいたから、今頃はもう麻薬も醒めて、これへ追っかけて来る途中だろうぜ」
「そうか。もし李逵とぶつかって、間違いを起しては大変だ。それでは俺も」と、朱貴までが、二人とともに元の道へ一目散に引返した。
果たせるかな、途中、彼方の闇から韋駄天の如く走って来た者がある。それなん、青眼虎李雲であった。
「おのれ、曲者。よくも最前は」
と、李雲はたちどころに長剣を抜き払って立ちむかって来たが、
「待った! お師匠。これには深い事情のあること。まあお腹もたちましょうが」