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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
脚には例の甲馬符を結び付け、精進潔斎、三日目にはもう沂水県の境に入り、一山の嶺を疾駆していた。
すると山坂道のすれちがいに、腰は女みたいに細く、肩は隼のような角張った目のするどい男が、
「あっ、神行法の戴宗?」
と、手の管槍を地に突いて振返った。
風のごとく、そばをスリ抜けた戴宗だったが、ふと気になって呼び返した。
「おーいっ、若いの、ちょっと待った。どうしておれが戴宗と分ったかね」
「あっ、ではやはりあなたは戴宗どので」
「そういう、おまえさんは?」
「彰徳府の楊林と申す者で、あだ名は錦豹子。……じつは二た月ほど前に、公孫勝先生に行き会い、おまえもいつかは梁山泊へ行けと、お手紙までいただいておりましたようなわけで」
「拙者のことなども聞いていたのか」
「そうです。一日八百里を走る戴院長さまも、今では山寨にいらっしゃると」
「いい者に出会った。じつは云々な仔細で、その公孫先生のあとを尋ねに来たわけだ。教えてくれんか、今おいでになる処を」
「いや、行きずりの居酒屋で、お別れしてしまったきり、さっぱり以後の消息は聞いていません。しかし、薊州管下なら隈なく地理は存じていますから、なんならご案内いたしましょう」