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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「たのむ。そしてまた、望みとあれば、拙者が君を梁山泊へ連れて行ってやる」
「そう願えれば大倖せです。ですが戴院長、かなしいかな、てまえは神行法の術も呪文も存じませんが」
「心配するな。拙者について、こうして行けば、自然に身も心も軽く、一日八百里の飛走ぐらいは何でもない」
戴宗は、彼にも呪符を持たせて、大きく腹中の気を空へぷっと吐くやいな、楊林の腕を拱んで飛走しだした。楊林は驚いた。馳けているとも、喘いでいるとも思えないのに、道も草木も急流のごとく、後ろへ後ろへと去って行く。そして肩が切る涼風、面にあたる爽気、なんとも堪らない快感だった。
山上は照り、山下は雨らしい。
そして濛々と白い蒸雲のたち繞る千山万水。大陸の道は、その中を羊腸と果てなくうねッているが、村里人煙は、それを見ぬこと、二日であった。
「戴院長。あれが有名な飲馬川です」
「おお、絶景だな」
「ひとつ訪ねてみましょうか」
「どこを」
「こんな絶景の中ですが、裴宣、飛、孟康といって薊州きっての三賊長が住んでいます。昔、てまえも知っていた仲で、三人三様、みなひとかどの男ですし、それにひょっとしたら、公孫先生の消息もそこで聞けるかもしれません」