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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
起きねえかよ、やいっ」
と、声にどすをきかせて枕元で呶鳴っている男があった。三人、同時に眼をさまして、ひょいと仰ぐと、例の宿の若者で、手に棍棒をひッさげ「――大事な鶏を食っちまったのは、てめえらだろう」と、怒っている。
「知るもンか、そんなものを!」と、時遷は下手人なので、慌てた色を隠せない。「おい、客へむかって、変な言いがかりをつけるなよ」
「おや、この野郎。居直りやがったな」
「知らねえことは、知らねえというしかねえや」
「ふざけるな。頭かくして尻隠さず、そこに食い散らした鶏の骨が残っているじゃねえか」
「あ。これか」
「これかもねえもんだ。さあ、どうしてくれる」
「じゃあやっぱり、酒の上で食っちゃったのかな。とんとゆうべは覚えもなかった。だが、たかが、鶏一羽、代を払ったらいいだろう」
「うんにゃ。この鶏は、ただの鶏とはわけが違う。時報ノ鶏といって、狂いなく五更を告げるんで、この界隈での共同の物になっているのだ。さあ生かして返せ」
「無理をいうなよ。おれたちは魔法使いじゃねえんだから」
「それじゃあ、梁山泊の下ッ端だろう。探りに入って来やがったな」
「なんだと」
「そうだ、そうに違いねえ。