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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
三重の城壁と二つの荘門を堅め、銅鑼、鼓笛を鳴らすこと頻りに急であった。――そしてたちまち、城門の吊り橋をさかいに、同族李応の人数と睨みあいの対峙となった。
「申すことあり! 祝の小伜ども、これへ出て来い」
李応が呼ばわると、
「オオなんだ! 麓の伯父」
と、三男の祝彪が、これも縷金荷葉のうすがねの兜に、紅梅縅しのクサリ鎧を着し、白馬紅纓の上にまたがって、三叉の大鎗も派手派手しく、部下百人の先頭に立って城門の外へ出てきた。
「彪だな、きさまは。こらっ、いつのまにきさまはそんな生意気口を覚えたか。その口にはまだ、おふくろの乳の香が消えておらんじゃないか。そもそも、きさまのおやじとこの李応とは、切っても切れぬ同族であるのだぞ。家柄として、祝家を宗家と立てているが、血からいえば、きさまらはわが輩の甥ッ子と申すものだ。……しかるに、何ぞや」
「はははは。李家の伯父。無理をしなさんな。セイセイ息を喘っているじゃないか。その先の文句は彪からいってやろう。――おれたち兄弟の手に落ちた梁山泊の廻し者、時遷という蝙蝠面をした小盗人を、返してよこせというのだろうが。どうしておめおめ返せるものか。