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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「さっきから、よう似たお方と見ていたら、やはり恩人の魯達さまでございましたな。てもまあ、なんたる大胆な……」
「おや金の爺さんだったのか。こいつあ意外だ。故郷へ帰ったものとばかり思ってたら」
「じつはあれからの旅路で、この地方の趙と仰っしゃる分限者に行き会い、その方のお情けに囲われて、今では娘の翠蓮も、この土地で一戸を持っておりますので」
「オイオイ。また口のうまい豚野郎に、ころりといかれているんじゃないか」
「いえもう恩人さま。その人は鄭などと違って真面目なお方。翠蓮もあなたのお蔭だと朝夕口癖のように申しております。何よりは今の暮しを見ていただくのが一番。さ、どうぞおいでくださいまし」
「ど、どこへ連れていくんだわが輩を。……なに妾宅。そいつア苦手だナ」
「ま、そう仰っしゃらずに」と、金老爺は無理に娘の家へ伴って帰った。それと聞いて、奥から走りでた金翠蓮が、
「まあ。……魯達さま」
と、蘭花の瞼にすぐ涙をうかべ、この零落の恩人を遇するに、細やかな心かぎりを見せたのはいうまでもない。
「ともあれ、お湯浴みでも」
と風呂をすすめ、その間に、下男女中を督して、鮮魚、若鶏、酢の物などの手早い料理、さて杯やら銀の酒瓶やら、盆果、点心(菓子)なども取揃えて、席も卓の上席にあがめ。