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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
兄弟の方ではまた「これは毛旦那も今日中に役署へ虎を出さなければならないので、自分の地内へ逃げこんだやつをこれ幸いと横奪りして口を拭いてやがるのだな」と、早くも腹の中ではにらんでいる。
あげくの果ては、喧嘩腰になって「家探しでも何でもしてみろ」「オオしてみなくて!」と、行くところまで行ってしまった。けれど村一番の大尽屋敷だ。広さは広し、それに荘丁雇人らが二人のあとに付いて廻って離れない。ついにその家探しでも得るところはなく、兄弟はやけのやん八、
「みていやがれ、出る所へ出て白黒をつけてやるから!」
と、捨て科白を吐いて、毛家の門を飛び出してしまった。
そして出るとまもなく途中で毛家のせがれ毛仲義にばったり会った。仲義は一群の見知らぬ男どもを連れていたが、兄弟の訴えを聞くと、
「よしよし、俺と一しょに来い。親父は何か悪い雇人に欺されているのだろう。おれが帰って家じゅうを調べてやる」
という同情的なことばだった。やれ有難えと二人は仲義に従いてあとへもどった。ところがこれはなお悪かった。なぜなら仲義はこの日の五更(夜明け前)ごろ、わが家の裏山で拾い獲た大虎を、さっそく奉行所へ届け出た上、なお予防線をしいて、こう訴えておいたものである。