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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
……これは驚いた、わが輩に坊主になれと勧めたのは、ご主人、貴公が初めてだな。元来、みじんの仏性もないわが輩に」
「無理にともおすすめできませんが、じつは先日、あなたを怪しんで、街の若者をかたらい、翠蓮の家の前へ押しかけさせたため、あれが噂の因になって、その後ちらちら油断のならぬ風説を巷で耳にいたします。万一があってはと、私もひそかに自責を覚えておるものですから」
「いや、この上ご迷惑をかけては、魯達こそ申しわけない。すぐにも退散するとしよう」
「いやいや。その前に、いま申した僧侶に転化する生き方もあるということを、ここでご一考なすってみては、どんなものかな。……もしお気があるなら万端の手続き費用、また五花ノ度牒(官印のある僧籍免許状)などもさっそく調えるが」
「いったい、寺入りするといえば、どこの寺へなので」
「ここより三十里彼方に、五台山という名山がある。一山の大道場は文殊院といって、結構壮麗、七堂の伽藍と多宝塔の美は翠色に映え、七百の出家たちの上にある碩学は智真長老といって、私とは兄弟分ともいえる仲でして」
「ほ。なんだか悪くない気もしてくるな」
「しかも、父祖代々からの大檀越でもあり、寺の造立や行事には、寄進はもちろん、なにごとにも座主の相談にあずかっておる次第。