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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
大きな運命の岐路に立たされた容である。しかし他人の鄒淵、鄒潤さえも弟に組みしてくれたという。実兄として見ていられようか。かつは奉行所内部の腐敗にもほとほとあいそがつきてくる。彼はついに意を決した。
事。こうまとまると段取はバタバタついた。
彼と、鄒との会見も、心地よくすみ、さっそく大牢襲撃の密議に入り、鄒淵はいちど山へ帰って行った。山寨の人馬財物を一ト括げにし、子分のうちから二十人を選り抜いて、ふたたびここへ戻って来る約束だ。
また孫新は、そっと城内へ行って、楽和に会い、これとも密々な手筈を打ちあわせ、さらに孫立の屋敷へも寄って、目ぼしい貨財を若い者に運ばせる。「兄のいいつけで」という弟の行為なので、屋敷の召使もなんら不審を抱くふうでもない。
かくて勢揃いの朝が来た。
その朝、おばさんは外出着に着かえて、おめかしも念入りに、何か進物籠のような物を若いのに持たせて一ト足さきに城内へ立って行く。
残る一同、孫立、孫新。また鄒の叔父甥二龍、その子分、店の若い者、孫提轄の士卒十名。すべて四十名余りは、店を閉じて、夜明けまえから酒をくみ合っていたが、やがて、おばさんが立ったのを見とどけてから二隊に分れ、裏と表の口から風の如くここをすっかり出払っていた。