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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「さて。……今日は一つやっちまおうか。小面倒だが、毛家の女婿のあの与力が、まだかまだかとまたうるさく言って来やがるにちげえねえ」
包吉。
例の、登州牢預りの閻魔面だ。
監視亭の机の小ひきだしから、独りこッそり毒薬袋を取出して、それを二人分の量に薬紙へ小分けしていた。やりつけているに違いない。薬剤師のような手つきである。
「……おや?」
あわてて、毒薬を元の小ひきだしへ仕舞い込むと、窓から外を覗き、何を見たのか、あたふたと早足に出て行った。
いま彼方の牢路次の角を、スウと見つけない大女の派手ッぽい姿が消えて行った。それから奥は解兄弟が入っている大牢があるだけである。そこで包が急いで行ってみると、そこには牢番の楽和が水火棍を持って立っていたので、出合いがしらに、包は呶鳴ッた。
「ええい、あぶねえ。女はどうした?」
「あ。差入れに来た女ですか」
「差入れに? ……。差入れならなぜきさまが預かって、一応監視亭へ届けに来んか」
「いま行こうと思っていたところです」
「だって女が見えんじゃないか」
「え、見えませんか。待てといっておいたんだが……。はてな、小用にでも行ったのかな?」