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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「あなたは、ここへきて出家を願う身、一山の長老と差し向って腰かけたりしてはなりませんよ」
「あ。なるほど」
魯達は後へ退がって、長者の趙とともに、新入生のように立った。
正面には長老、首座、以下順に東西二列となって、紫金紅金の袈裟光りもまばゆく立ち流れて見えたのは、維那、侍者、監寺、都寺、知客、書記らの役僧たちか。――いずれも大きく口を結び、眸を澄まし、見るがごとく、見ぬがごとく、新入りの魯達をひそかに凝視の態だったが、どの顔つきにも「……はてな?」と、いいたげな怪訝りが甲乙なく漂っていた。
そうした心のうちで、誰も彼もが密かに思うらく。「……どう眺めても、いかにもぶっそうな人相だな」「あれで出家発心とは?」「……趙檀越のご推薦だが、あの気味わるい居ずまいの不遜さといったらない」「……だが、長老もおひきうけとあれば」などと、声なきものも、自然、並いる姿の目鼻には妙な微風となって現われずにいなかった。だが、どこ風吹くかの魯達は、この森厳さと山冷えに、嚔でも覚えてきたか、しきりと鼻に皺をよせて、鼻をもぐもぐさせていた。
なにを感じ入ってしまったのか、まるで棒を呑んだように魯達は直立のままでいる。