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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
百年の悪財、一日に窮民を賑わし、梁山泊軍、引揚げの事
ここ一郭の陣座には、祝朝奉をはじめ、祝氏の三傑とよばれる息子の祝龍、祝虎、また武芸師範の欒廷玉、そのほか祝一門おもなる者、ぞろッと甲冑をならべていた。
そしてまた一隅には。
これは巧みに、欒廷玉との旧縁をつかって、荘内の客となり澄ましていた連中がいる。すなわち病尉遅の孫立、孫新、また鄒淵と鄒潤、それに解の兄弟や鉄叫子楽和などの七名で、なるべく目立たぬようにと、さしひかえている姿だったが、
「いや、ご三男さま」
と、その中から孫立がめずらしく口を出した。
「敵の宋江が、姿を見せないのも、弓の花栄が尻ッ尾を巻いて逃げたのも、そいつは無理もありません。自然だろうと思いますな」
「なに。それはどういうわけだ、孫立」
「だって、みすみす死を求めに出て来るばかはありますまい。音にひびいた祝氏の三傑の中でも、わけて勇猛のお聞えあるあなたが、いきなり陣頭に出て行っては、ご自身、木の葉を掃いてしまうようなもので、それでは合戦になりッこもないでしょう」
「わははは、なるほどな」
祝彪が大笑すると、父の朝奉も、満座の面々も、みな手を打って、
「これは考えものだ」
と、しばし笑いに揺れ合った。