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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

しかし時すでに薄暮。勝つには勝ったが、またもついに、宋江は取り逃がした。

城内は赤々と凱歌にかがやく篝火の晩を迎え、荘の本曲輪では一同、

「また一人、擒人がふえた」

と、酒壺を開いて、陣宴の歓に沸いていた。

祝朝奉もすこぶる上機嫌で、

「お客人の大手柄だわ」と言い、「――せがれども、合戦いらい、これで梁山泊の捕虜は幾人になったかの?」

と、酒の肴みたいに訊ねていた。

二男の祝虎が答えて言った。

「今日の捕虜、石秀という者を加えて、ちょうど七人になりますよ。――まず最初に捕まえたのが時遷、次に間諜の楊林、それから黄信、王矮虎、秦明、飛――どいつもこいつも梁山泊では一トかどなやつばかり」

「うむ、いずれみな、檻車に乗せて、開封東京の朝へ差立て、皇帝からお褒めをいただくわけだが、しかしそれまでは、傷物にしてはならん。大事にしておけよ」

「さよう、さよう。捕虜も見ばえをよくしておかなければいけませんな」と、相槌を打ったのは、客卓にいた孫立だった。

「――ご子息がた。あとは宋江を生け捕ることです。これに宋江が加えられれば、祝氏の三傑の名は都の大評判となりましょう。ところで、押送までの監視は、充分、お抜かりなくしてあるでしょうな」