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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页
供待ち放談
臣賀は、きびしくいいつけて、雑色たちと共に、邸内へもどって行った。
小次郎は、さて、なんの事やら、分らなかった。
けれど、これが右大臣家への、奉公初めの一つかと思い、ぽかっと、急流の中から、首だけを出していた。
水はまだ、雪解をもつかと思われるほど冷やっこい。ぎゅっと、流れの中で、四肢の骨が、肋骨に向って凝結した。――が、ほうっと、大きく肺気を空に吐いたとき、朧な月を、平安京の夜空のまん中にふと見つけた。
「……あの月も、都に来ている。ああ、おいらも、都にいる」
彼は、たくさんな、馬の顔を、朧雲の上に描いた。故郷の大結ノ牧の馬房に、こん夜も、うまや藁を踏まえ、平和に眠っているであろう馬たちに、心から告げていた。――おいらの友達たちよ、淋しむなかれ。おいらは幸福だ。都人になるために、加茂川の水がいま、おいらの旅の垢を洗ってくれている。
供待ち放談
延喜は、二十二年までで、その翌年から、延長元年と、改元された。
相馬の小次郎も、はや二十一歳である。彼が、右大臣家に仕えてから、いつか、五年はすぎたわけだ。生意気ざかりの年頃といっていい。
もちろん、元服もし、帯刀もゆるされ、もう一人前の男である。