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しきぶこうじ

式部小路

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页

青空文庫

「余程お口惜しかったって、そうでしょうとも。……新しい秤をね、膝へかけて二ツにポッキリ。もっともお足に怪我をしておいでなすった、そこいらぞッとするような鼻紙さア。

屑の籠を引っくりかえして、

(モ死にたいねえ、)ッて、思わず音を出したよ、とおっしゃるんですがね、そのままお足を投出して、長くなって、土手に肱枕をなすったんだとさ。

鵯がけたたましく啼き立てる。むこうのお薬園の森から、氷川様のお宮へかけて、真黒な雲が出て、仕切ったようにこっちは蒼空、動くと霰になりそうなのが、塗って固めたようになっていたんですって。

その中へね、火の粉のようなものが、ぱらぱらと飛ぶから、火事かと御覧なさると、また白いものが、ちらちら交ったのを、霰かと見ていらっしゃると、またきらきらと光るのを、星かとお思いなさる内に、何ですとさ。見る見るうちに数が殖えて、交って、花車を巻き込むようになると、うっとりなすった時、緑、白妙、紺青の、珠を飾った、女雛が被る冠を守護として、緋の袴で練衣の官女が五人、黒雲の中を往来して、手招をするのが、遠い処に見えましたとさ。

ずッと立って行こうとなさると、直ぐに消えて、隠れていたお月夜になったそうで。