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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
二十
」
頭をふって、
「要らない。」と活溌にいった。
「でも貴女、貴女が、そんなにお気がつくんですもの。可うございます。貴女がおっしゃいませんでも、私からお強請り申しましょう。」
「おばさん、気がついた御褒美なんて、不可いの。先生が怒るものなの。」
「へい、何でございますえ。」
二十
「何だか、怒るものよ、おばさん当てて御覧なさい。」
「…………」
黙ってつくづく見たばかり、当てものして遊ぼうには、ちと年紀が老けていた。
「当てて御覧。愛吉、」
と唐突にこっちを呼んだ。この時まで、お夏が女房といいかわした言は、何となく所帯染みて、ひそめいて、傍聴きするものの耳には、憚る節があるようであった。
いかばかり酒に咽喉が鳴っても、あいにく耳が澄まされて、お夏の口から、(先生)というのを聞いて、はッと胸に応えたのは、風説に聞いて尋ねて来た、式部小路の麗人はさる人の、愛妾であるというのである。
果してそれが柳屋のならんには、米が砂利になる法もあれ、お囲いなどとは、推参な! 井戸端の悪口穴埋にして、湯屋の雑言焼消そう、と殺気を帯びて来たのであるから、愛吉はこれは、と思った。
ト同時に、この内証話からは、太く自分が遠ざけられ、憚られ、疎まれ、かつ卻けられ、邪魔にされたごとく思ったので、何となく針の筵。