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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
三十五
聞いてほんとうにした奴も奴だ。で、お聞きなさい。
(その梅岡さんに頼んで、いつの幾日――今日だ。)と愛の野郎がいいました。すなわち一昨々日。
そこで、またお夏さんの言を愛吉がいうんですが、
(奥さんを上野まで連れ出させよう。お前、前へ廻って支度して、待伏せをしておいで。いい処があるかい。)
というから、愛吉が、(占たな! 占たな!)
(それだってお前、時の都合と、所はえ?)
トこりゃお夏さんが心あっていったんですな。考えていると、愛吉は何、剃刀で殺すぐらいは、自分が下駄の前鼻緒を切るほどにも思わない。都合をして、定子阿魔の顔さえ見せておくんなさりゃ、日本橋でも、万世橋でも、電車の中でも、劇場でも、どこでもかまわないッていったそうでさ。するとお夏さんの方は覚悟があるから、
(谷中なら、墓原の森の中を根岸で下りる、くらがり坂が可い。踏切の上の。あすこいらで、笹ッ葉の下へでも隠れておいで。)
こりゃ、それ、今もおっしゃった歌の先生、加茂川の馬車新道へ、炎天にも上野まで、鉄道馬車。後を歩行いて通ったから、不幸にして地の理が明い。
(私は梅岡さんに頼んで、こうしよう。