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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
三十八
じゃ何だ、医学士はざくざく注ぎ込む、お夏さんはばらばら遣う、しかも何一つ自分から欲いといったことはないのか。そうして一たびも枕をかわさぬ、豪いな! その清浄な膚をもって、緋の紋綸子の、長襦袢で、高髷という、その艶麗な姿をもって、行燈にかえに来た雇の女に目まじろがない、その任侠な気をもって、すべてを愛吉に与えてその晩……」
「…………」丹平黙然として少時不言。この間のしょうそく、そもさんか、偈無可為証。
三十八
ややあって丹平他をいう。
「その癖、光起さんを恋しがって、懐しがって、一日と顔を見ないと、苦労にする、三日四日となると鬱ぎ出す、七日も逢わなかろうものなら、涙ぐむという始末。
じゃ顔を合わせればどうかというと、すねるような、くねるような、その素ッ気のなさ加減、傍で見る婆さんの目にも気の毒なくらい。
きちんとして、
(先生、)
(勝山さん、)
という工合が、何の事はない。大町人の娘が、恋煩いをして、主治医が診察に見えたという有様。
先生がうまい事をいいましたって。
(勝山さん、どうかその医学上の講釈を聞くのと、手習を教えてくれだけはあやまる。私は藪の上に悪筆だ、)というたのだそうです。