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しきぶこうじ

式部小路

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页

青空文庫

十三

お嬢さんが、洲崎になんぞ、お前、そんなことをに出したって済まないよ。素の堅気でいらっしゃらあね。」

「ですからさ、皆が不思議だッていってるんで。いずれこうちょいちょいこのお二階へいらっしゃる方があるッてのは、そりゃ分っていますけれど、どうもそのお嬢さんの御身分が分りませんが、ええ、おかみさん。」

十三

「ねえおかみさん、可いじゃありませんか、町内のこッてさ、話してお聞かせなさいよ、ええ、おかみさん。」

早やいつの間にか自堕落に、板の間に腹這いになった。対手がソレ者と心安だてに頤杖ついて見上げる顔を、あたかもそれ、少い遊女の初会惚を洞察するという目色、痩せた頬をふッくりと、凄いが優しらしい笑を含んで熟と視め、

「こりゃお前さん、お銭にするね。」

「え、」

「旨く手繰って聞き出したら、天丼でも御馳走になるんだろう。厭だよ、どこの誰に憚って秘すッということはないけれども、そりゃ不可いや。」

「嘘々々、」

口を尖らせ、慌てた早口、

「串、串戯をいっちゃ不可ません。誰がそんな、だってお前さん、火の玉の一件じゃありませんか。ええ、おかみさん。

私等が口を利くにゃこっちの姉さんの氏素性来歴を、ちゃんと呑込んでいなかった日にゃ、いざッて場合に、二の句が続かないだろうじゃありませんか。