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しきぶこうじ

式部小路

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页

青空文庫

二

昨日の今時分は、ここで柿の皮を剥いて食べた、正午まわりを帰り路の、真赤な荷をおろした豆腐屋があったに。

二

学生の姿が見えなくなると、小店の向うの竹垣の上で、目白がチイチイと鳴いた。

身近を通った跫音には、心も留めなかった麗人は、鳥の唄も聞えぬか、身動ぎもしないで、そのまま、じっと。

秋の水は澄み切って、鮎の鰭ほどの曇りもないから、差覗くと、浅い底に、その銀の平打の簪が映って、流が糸のようにかかるごとに、小石と相撃って、戛然として響くかと、伸びつ、縮みつする。が、娘はあえて、過って、これを遺失したものとして、手に取ろうとするのではない。

目白がまたチイと鳴いて、ひッそりと、小さな羽を休めた形で、飛ぶ影のさした時であった。

下行く水の、はじめは単に水上の、白菊か、黄菊か、あらず、この美しき姿を、人目の繁き町の方へ町の方へと……その半襟の藤色と、帯の錦を引動かし、友禅を淡く流して、ちらちら靡して止まなかったのが、フト瞬く間淀んで、静って、揺れず、なだらかになったと思うと、前髪も、眉も、なかだかな鼻も、口も、咽喉の幽かに見えるのも、色はもとより衣紋つきさえ、明くなって、その半身をありありと水底に映したのである。